紅葉が始まった山は、常緑樹の育っているエリアとの境界を披露しつつ、一枚の木の葉の赤みのくまぐままで想像させる。
会館の控え室のブラインドを指で広げながら、目の前の山の向こう側はどうなっているだろう、行ってみたい、と心の底から思う。
道路が開通しているわけではなく、長野県との県境は行き止まり。それでも人の足での行き来はあったらしく、飯田市と川根本町の方言に共通のものがあるとは、制作の泉さんが教えて下さった事実だ。
今回は、12月の公演に出演してくれる町内4小学校の合同練習のために一泊した。ふだんは別々の小学校で学んでいる子どもたちが一つの作品を踊る。起伏と見応えのあるロケーションに育ち、晴れやかさと澄み切った空気のふんだんな感じを凝縮させた32人の身体。その明晰な集中力。
4時間目の終わった後、校庭のあちこちで持参したお弁当を広げている姿に見送られて校門を出た。11歳の冬に起こる舞台経験はどの子にも共通のもので、ゆくゆく例えば5年後に高校で再会した時に、話題の端に登ったりするだろうか。下山する車の中でそんな話題になった。
先生にも親御さんにも大切に育てられている子どもたちに、第三の大人として出会う者として、思いがけないことをする大人でありたいと願う。
ひと月後の再会について、既に心が踊っている。
(茉歩)
宿の窓から撮りました。川の流れはどこまでも穏やか。